長谷川修平さんの絵本は、ごく普通の日常生活の断片から、するどく問題点を掘り起こしている作品が多いと思います。
この絵本も、あの大震災の前日ということにとても大きな意味を持っていると思います。自分はそう思いながらこの本を選んだのですが、カバーの裏に書かれた説明を除くと、作品の中ではあの阪神淡路大震災に触れていない。
見直すと暗示している光景があるのですが、あまりにふつうな日常生活であることで、読むことの難しさを感じました。
子どもはあの大震災を実体験していないのでした。あの大震災の悲惨さ、突然の災害が普通の日常生活を破壊してしまうのだと伝えるには、下地がない。
戦争、水爆実験、多くの歴史上の事実に関する絵本、事実を前提とした絵本を多く読んできた者として、一つのハードルを感じました。
歴史の中で、災害は突然過ぎる。
ごくふつうの生活の重さを伝えるにはどうしたらよいだろう。やはり、阪神淡路大震災のことを伝えなければ、この絵本の本当の重さを感じてもらえない。
そんなわけで、この本は自分の課題図書として読み聞かせ保留中です。
ごくふつうの生活を通して、その大切さを伝えていると思います。子どもに受け入れる体制ができたとき、是非とも読みたいと思います。