今、各書店の店頭に大きく場所をとって置かれている絵本の1冊です。
帯には「原作アニメが米国アカデミー賞受賞」と書かれています。
後書を読むと、ほかにも、世界的ないろいろな賞を受賞しています。
アニメの監督である加藤久仁生(くにお)さんがイラストを描いています。
さて、内容ですが、子どもが読んでも悪くはありませんが、大人向けの絵本です。
見た人の心を鷲づかみにする、老齢のおじいさんの切ないファンタジー。温暖化の影響なのでしょうか、主人公のおじいさんの住む世界では、海上が上昇し、人々の多くは水かさが上がる度に、自分の家の上に新しい家を積む(作る)『つみきのいえ』方法で長い間生きてきました。
おじいさんの家は、おじいさんの人生の分だけ、いくつもあり、その一つ一つの家に今はもういない家族の思い出が詰まっていました。
こういう切なさや哀愁という感情を思う存分感じることができるのは、やはりある程度「生きてきた」自分の歴史を持っている大人≠ネのではないでしょうか?
物語としての完成度も高く、世界で認められた作品というのが、よく分かりました。また、こういう作品がいろいろな国で称賛されるということは、多くの人々の心の中に、「おじいさん」のような大切な思い出が眠っているのではないでしょうか?
強いて言うと、パステル調の淡い色彩のため、遠目が利かないので、あまり大勢いるお話し会などでは使いづらい作品です。
どちらかといえば、ひとりでひっそり読むのがいいかもしれません。