清水真砂子さんの『そして、ねずみ女房は星を見た』の中で紹介さてれいる作品で、以前から気になっていたのですが、シリアが部隊ということで、私にとっては欧米の作品とは違いなじみがなくなかなか手にする機会はありませんでした。
イスラム国の勢力拡大、日本人拉致殺害というショッキングな事件が毎日のように報道されていた時に、シリアという国が一気に自分の身近に感じられ読んでみることに。
訳者あとがきによると、時代は1960年代。主人公の少年は、生家のパン屋が貧しく学校へ行くことを断念せざるを得ない状況にあります。
彼のガールフレンドの父は秘密警察に勤めており、それだけを聞いただけでも治安がよいとは言えません。
新聞記者を目指す少年の日記形式という形で書かれており、政情不安とは言っても、恋愛・仕事・信頼できる人々との関わりは、私たちとなんら変わるところはありません。
この物語の中でやはり魅力的なのは、サリームじいさんという老人の存在でした。知恵や経験が豊富で、またとてもユーモアがあり、少年にとってはとても大切な友人。
子どもが大人になる時に必要なのはこうした信頼できる大人の存在なんだということを改めて思いました。
ちょうど同時進行で読み進めていた本『生きるぼくら』も若者が自立する過程が描かれていたので、信頼できる大人の存在がどんな時代にも不可欠であるということを同時に感じました。
出版年は1988年と以前からある本ですが、今もう一度光をあててほしい本だと思います。
大人の方にも進路を考える高校生前後のお子さんにもおすすめです。