道路で走ったり、車道におりようとするたろうくんを、お母さんや町の人たちが注意をするお話し。
端的に書いてしまうとこうですが、ただその注意には愛情を感じます。
たろうくんやどうぶつは怒られて「つまらない」とへの字口。だけど「けがをするのはいやなので」と、とても子供らしい素直な感情。
だってそうでしょう、ここでたろうくんが「交通ルールを守らないといけないので」や「他の人に迷惑をかけるといけないので」と言ってしまうと、たちまち「嘘の本」になってしまいます。
子供が等身大で読めるのは、たろうくんの子供らしい真実のことばが書いてあるからでしょう。
それが愛情をもってしかられたのであっても、子供は「私のためを思って叱ってくれたんだ」などとは思わないでしょう。
ただそれでいいんじゃないでしょうか。
「けがをするのはいやなので」
と、気付くことが、ルールを守る理由の第一歩なんだと思います。
規則を守りなさい、ルールを守りなさい、そんな心に響かない言葉より、「けがをするのはいやでしょう?」、そのほうが子供のこころに届くと思いませんか。
この本の原画を拝見する機会がありました。
かわいい絵だなと思いつつもあっさり描かれているようであまり興味を持っていなかったのですが、原画に残っている幾重にも描かれた下書きのラインに、その仕事の正確さや丁寧さを感じずにはおられませんでした。
私の第一印象を反省したほどです。
長く親しまれている理由は数え切れないほどあるような気がしました。