子どもの頃、とても好きな絵本でした。
お話もさることながら、絵のごつごつとした荒いタッチも充分に魅力的でした。
大人になってから読み直してみると、少し暗い感じがしました。望み通りりんごがなったのに、ワルターは何一つ幸せにはなっていないのですもの。
大きくなりすぎたりんごは、ワルターを町の笑い者にした挙句、無用の長物になってしまうし、りんごが役に立った時も、「よくやった!」というより、「これでやっかいなりんごもなくなって良かった」という感じが漂っています。
でも「おばけりんご」という楽しそうな物語的要素と、ちょっと暗い感じが奇妙に調和して、不思議な雰囲気を生み出したような気がします。
昔、明るいだけの話ではない『すてきな三にんぐみ』にものすごく惹かれたように、このお話も楽しいだけではないところが、私をひきつけて離さないところなのかもしれません。