ほんだきんいちろう による『The giving tree』の 日本語訳絵本。
村上春樹の訳本も出版されたが、個人的にはほんだ訳の方が断然おすすめである。
残念ながら現在絶版。図書館には所蔵があるはず。
原書では木を”she”と表現しており母親の無償の愛のイメージが強いが、この本では木の性別や少年との関係性をあまり感じさせない。
親か祖父母か近所の人かはわからないが、少年が小さい頃からずっと近くで見守って来た人の象徴が「木」であるとの印象を受ける。
小さかったあの子は、大きくなってもずっと愛しいおちびちゃんのまま、というイメージ。
原書と比べると意訳がままあるが、文のリズムがとても良く、まるでショートムービーのような空気感を感じさせる。
”happy”を「幸せ」ではなく、「うれしい」「たのしくやる」と訳すセンスが素敵。
白眉は「木はそれでうれしかった」の繰り返しと、その後にくる「だけどそれはほんとかな」。
シンプルな文なのに目に入った瞬間ドキドキした。
文に引きずられて絵本なのに絵にあまり重心がいかないのと、原書と違った印象を与えるところが欠点。
【原書との比較】
・表紙カラーが原書よりも濃い緑になっている
・印刷が上と右側で5mmくらい切れている?(2頁目で顕著)
・献辞は省略