話を読んでうなり、絵を見てうなり、エピソードを知ってうなり…、この話に関わる物すべてが付け入る隙なく、私を圧倒する作品です。
話:
家のない老人と犬の出会い。犬は魔法使いで、老人の望みをかなえようと話すのだけど、老人の答えが素晴らしい。
物欲から離れた浄化された心とでもいうのでしょうか、誰にでもいえることではないのでそれだけで感銘しました。
さらに、犬は自分が魔法使いであることを捨てて犬になりきる。
これ以上の友情はないでしょう。
究極の愛だと思いました。
絵:
色鉛筆で一見雑に描かれたような絵。
しかし、この絵が話の情景にピタリとはまっているのです。
吹雪の情景、老人の心象風景、老人と犬の心の交流…。
はっきりと表現するのではなく、色鉛筆の線で全てを表現した上で、情景や心を本に溶け込ませています。
究極の表現だと思いました。
エピソード:
実在したというモデルがいること、歌手のドミニク・マルシャンが20歳で物語を歌にしたこと、ドミニクが37歳の若さで亡くなったこと…。
そのどれもが、この話に神々しさを与えています。
20歳とは思えない感性で、ドミニクは早世したという事実からこの作品をとても高いところまで持ち上げてしまいました。
この崇高にして感動的な絵本は、どの年齢層からも受け入れられることと思います。