息子が小3の頃、知人に紹介され、試しに読んでやりました。十七年前の事です。当時は、絵本ではなく、読み物でしたが、中学になった頃に突然思い出したようで、「あれ、絵本じゃなかった?映像がはっきり記憶の中に残ってるんだけど」と不思議そうにしていました。
賢治さんの、お話の持っている力を改めて再認識した瞬間でした。
その後、朝日ソノラマから、ますむらひろし氏の漫画でかかれたものがありました。中学生にも朝読の時間に読み聞かせを3回に分けて読んだこともあります。
昨年、本屋さんで、大島妙子さんの絵でこの絵本を見つけたときは、古い友人にばったり街角で出会ったような、驚きと、喜びに浸り、早速手にして、レジにすっ飛んでいました。
すぐに、孫たちにも読んでやりました。小学校3年の女子と5年の男子です。お話は、3部に分かれていて、長さは30分はかかりますが、蜘蛛やなめくじ、たぬきが何の競争をしているの?と、どんどん一気に読み進んでいきました。
動物の生態をしっかりみつめ、人間社会もしっかりみつめている賢治さんならではの、ユーモアあふれる、痛快なお話です。
小学校5年生のクラスでも、紹介しました。大島妙子さんのユニークの絵を楽しんでくれているようでした。「長いお話を、最後まで聞いてくれてありがとう」と言うと、男子生徒が「おもしろかったよ!」と言ってくれました。思い切って紹介してよかった、賢治さん、あなたのおはなしは、こどもたちの、透きとおったほんとうのたべものになったことでしょうと、心ひそかに賢治さんの願いを少しでも、継承していけることを幸せをあじわっております。