南アメリカ北部、ベネズエラという国の子どもたちのお話です。
1950年代、ベネズエラでは都市の人口が急激に膨れ上がりました。しかし、受け入れ体制はなく、何もかもが足りません。人々は山の斜面に小屋を建てます。こうしてできた集落はバリオと呼ばれ、今日では首都カラカスの人口の半分が、こうした貧困者居住区に住んでいるそうです。
何もかもが足りない中、もちろん子どもたちの遊び場もありません。この絵本は、「みんなが遊べる公園がほしい」と子どもたちが自ら立ち上がり、大人も巻き込み、ついに願いを叶えるというお話です。
子どもたちの行動力や大人の協力もさることながら、私が驚いたのは、いろいろなものが足りないこの貧困者居住区に図書館があり、図書館が子どもたちや町の人の暮らしの中にきちんと位置付けされていることです。このお話の中では、図書館員は子どもたちの相談相手になり、図書館は子どもたちの放課後の居場所、そして町の人たちの話し合い会場になったりしています。
「図書館がある」ということは、バリオという不十分な環境で育っている子どもたちの「希望」だと思いました。図書館とは、これから成長していく子どもたちにとって、知識を得、さらに、生きていく力を得ることができる、そんな場所なのですから。