「ママのそばにいるのよ」「こっちにいなさい」――。そう言われて「はーい」とお返事しても、あひるのデイジーはまわりに気がとられ、いつの間にかお母さんとはぐれてしまいます。
デイジーの姿は、親にはおなじみの光景かもしれません。わたしも即座に息子と重ね合わせ、幼い子どもの好奇心に、ほほ笑ましいと感じながらもハラハラする気持ちを想起しました。
小さなデイジーの体験は、ほんの短い時間でのできごとですが、大胆な構図と筆致でドラマチックに描かれます。迫りくる緊張感は作品のクライマックスで、読み手もいつの間にかガマの茂る水辺に誘われている感じ。作者の実力が感じられます。ここは何度読んでも息を凝らす場面ですね。
緑香るさわやかな風がわたってきそうなイラストなので、読むとしたらこれからの季節がぴったり。あどけないデイジーの表情を見ているだけで、シリーズ化された理由も納得できるというものです。小さなお子さん向き。