秋の終わりの夜、山奥の小さな駅が舞台です。
最終列車の後に、不思議な列車がやってきます。
山からふもとの町へ、冬を届けに行くという列車は、運転手さんも乗せているものも、あっと思わせるものばかりです。
木枯らしや粉雪、ともすれば寒々とした風景になりがちなところですが、柿本さんの温かみある挿絵が、寒さの中にもほっこり暖かさを伝えてくれています。
赤々と照らすカンテラや、しゅんしゅんお湯の湧くやかん、小さな駅がまるでオアシスのようにさえ感じられます。
冬を届けるという列車もまた、帰りには春風やれんげの花を乗せてくると運転手は告げて行くのです。
雪の深い山の中の、長い長い冬の始まりは、またその先にやってくる春を連れてくる冬でもあるのですね。
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲んだ駅長さんでしたが、裏表紙では湯気の立ち上る熱いコーヒーが飲めたようでよかったです。
秋の終わりから、冬の初めの季節にかけて、毎年読みたくなる1冊です。