はじめてこの本を手に取ったのは、地域の家庭文庫でのこと。8歳のときだった。その文庫に通うようになるまでは、多彩な絵本に触れる機会がほとんどなかったこともあり、なんと美しい絵本があるのかとほとんど呆然としてしまったほどだ。
透きとおるような色彩のちぎり絵の〇が、あおくん、きいろちゃん、という他と替えの利かない登場人物に見えてくる不思議、ひと色になって遊ぶ高揚感には陶酔すら感じた。親にもわかってもらえなくて、心細さに泣いて泣いて体が涙になって、ようよう元の色に戻り、家族と認めてもらえる安堵は、迷子になりそうになった子どもなら誰でもよく知る心細さと安心感だ。
この本もまた「往きて還りし物語」なのだと思い知るのは高学年になってからだったけれど、8歳のそのときから、この本は宝物の1冊だ。
たくさんの子に向かって読むよりは、おひざにだっこで読み聞かせたい本。それならば3歳前後。公園や友達の家に一人で行きたがりはじめる年頃に。
みんなで読むならむしろ拡大してスクリーンで見せるのがいい(もちろん許諾はとってくださいね)。透明感も生きるだろう。それならば5歳くらいで。
また、水彩絵の具を使いだす小学校低学年でもいい。
自分の子どもには、性格によって読む時期を大きく変えた。どこにでもどんどん行ってしまう娘にはまだ2歳のときに、ゆっくりそうっと友だちとの関係を作っていきたい息子には5歳をすぎてから、絵筆を早く持ちたがった下の息子には、色を混ぜることを覚えた4歳の誕生前に。下の娘が自分から読めと持ってきたのは3歳だったろうか。
小さな子から大人、そしてシニアまで、いくつになってもその時なりの楽しみ方ができる、オールタイム・ベストな1冊。