表紙の重厚な絵に魅せられて読みました。
絵を描いたバグラム・イバトーリンの他の作品は、「カラス笛を吹いた日」「おとうさんの庭」が邦訳されています。
2007年のアメリカの作品。
時代背景は、町並みや車からすると古き良きアメリカ辺り。
クリスマスが近づいた夕暮れ時、主人公のフランシスがアパートメントの下に、オルガン弾きとサルを見つけます。
フランシスは、それがとても気になり、ママに尋ねます。
「あのひとたちは、よるは どこかへかえるの?」
ママは答えます。
「そんなこと おかあさんにもわからないわ。
でも、どこかへかえっていくでしょう。
みんな どこかへ かえるんだから」
腑に落ちないフランシスは、さらに質問を投げるのですが、ママは取り合ってくれません。
そんなフランシスは、オルガン弾きとサルが、その夜どうしているのか気になって、真夜中まで起きていて、路地に寝ているのを目にするのです。
次の朝のママとの会話も、オルガン弾きとサルのことで始まるのですが、その日は教会でのフランシスの舞台発表の日ですから、ママは全く取り合いません。
教会へ向かう時、フランシスは、サルのカップにコインを入れ、オルガン弾きに教会の舞台にきてねと告げるのです。
フランシスとママが好対照。
もちろん、ママの取る行為は現実的であり、ごく当たり前のもの。
でも、フランシスの優しい心を理解してあげることは、必要ではないのかと思います。
我が身を振り返っても、子供が知りたいことに真摯に対峙したかと言うと出来ておらず、考えさせられてしまいました。
最後、フランシスは、舞台に立ちますが、セリフが出てこないのです。
その時、後ろの扉が開き、オルガン弾きとサルが入ってきて、フランシスは大きな声でセリフを発することができたのです。
その時の、フランシスの喜びに満ちた顔は、題名の「Great Joy」と呼ぶに相応しいもの。
また、戸が開いた瞬間に、後ろを振り返った観客が一人いるのですが、それがママなのです。
舞台が終わっての懇親の席では、オルガン弾きとママが歓談している姿が印象的であり、心の琴線に触れるシーンでした。
ごく短い時間の出来事のお話ですが、色々と考えさせられることの多い絵本です。
クリスマスに相応しい慈悲深い話であるとともに、親子の在り方も諭してくれます。
ストーリーも良いし、何よりも所々金に縁取られた絵は、その一枚がまるで絵画のようであり、見るものを惹き付けること間違いありません。
幼稚園の頃に読み聞かせると、とても良い絵本としてオススメします。