題名とユル・シュルヴィッツの作品であることに惹かれて読みました。
ユリ・シュルヴィッツはコールデコット賞を三度も受賞しています。
せんそうで あちこちが ひの うみに なり、
たてものが くずれおちると、
ぼくの かぞくは なにもかも うしなって、
いのちからがら にげだした。
という書き出しで始まるのですが、ユル・シュヴィッツの実話です。
第二次世界大戦の1939年のポーランドから、トルキスタン(今のカザフスタン)に逃げだしての生活を描いたもので、4歳〜5歳の頃の物語。
おなかをすかして食料を待っていたぼくに、おとうさんが買ってきたのは世界地図。
つらそうなおかあさんとおこったぼく。
でも、その世界地図で、ぼくが想像したり、絵を書いたりする様がとても生き生きと描かれていて、絵本作家になるきっかけになったのではないかと思いました。
トルキスタンでの貧しい暮らしぶりは、とても想像の出来ないものであって、戦争のもたらすものを、端的に教えてくれます。
戦争そのものの絵よりも、こうした現実的な絵の方が、心に響くのではないでしょうか。
そして、おとうさんが地図を買ってきた行為は、ぼくに生きる希望を与えてくれただけでなく、将来にも大きな影響を与えています。
おとうさんが、何処まで意図したのかわかりませんが、こんなおとうさんでありたいと思わざるを得ませんでした。
小学校高学年をオススメ対象とする方が多いのですが、ぼくと同年代のお子さんにも読んで欲しい作品です。
もちろん、戦争の意味は分からないかも知れませんが、こういう生活をしている子ども達もいるのだということを知るだけでも、価値があることだと思います。
心に残る作品なので、幅広い年齢のお子さんにオススメします。