綿花に埋め尽くされた畑にたたずむ少女の後姿が描かれた表紙。
空は晴天なのにとても寂しげなその後姿にとても心をひかれました。
「ぬすみ聞き」というタイトルも、絵本のタイトルらしからぬ響きで気になりました。
表紙をひらくと、最初にとびこんでくる「はじめに」というページ。
そこで、この本が描かれた背景が説明されています。
アメリカで奴隷制度が認められていた時代のお話だったのです。
ぬすみ聞きすること。
決して褒められた行為ではないですし、現在では犯罪にもなります。
でもそれをしなければならなかった極限の状況、そんなひどい状況が存在した時代が確かにあったということ。ほんとうに悲しいことです。
読んでいる途中で、子どもの頃に読んだ「アンクル・トムの小屋」のお話を思い出しました。
最後のページの解説で、「アンクル・トムの小屋」の出版がリンカーンが大統領となる8年前だったこと、南北戦争後に奴隷解放が制度的には行われたけれども、その後も差別は続いたことなどが書かれています。
今は自由の国を標榜するアメリカ、現在の大統領は初めてのアフリカ系アメリカ人であることを考えると、隔世の感がありますね。
でも、この本に描かれているのは、忘れてはならない歴史の一つだと思います。
こういう歴史があって、現在がある。そのことを子ども達にも伝えていかなければ、、、と思いました。