内田麟太郎さんの文章が大好きです。内田さんの文章の最大の魅力は、声に出した時の読みやすさではないでしょうか。
わたしは保育園に通う息子に絵本を読み聞かせますが、声にして読んだときの読みやすさは絵本選びの大事なポイントになっています。
聞いている息子も、内田さんのリズミカルな文章にぐんぐん引き込まれていきます。
このシリーズには言葉遊びのような変てこな歌が登場しますが、これには毎回ゲラゲラと大笑い。その部分だけを何回も読むようにせがまれます。喧嘩の後にオオカミの家から帰っていくキツネが発する「ずるっこ おしっこ ひがみっこ!」なんて捨て台詞は、園児の心をわしづかみです。
そして内田さんの魅力的な文章に負けていないのが、降矢ななさんの力のある絵です。喧嘩の場面でのオオカミさんの絵本から飛び出してきそうな迫力、土砂降りの雨の中を帰る悔しそうなキツネの表情。そうかと思うと、裏表紙には仲直りのきっかけをつくったアリにお礼のケーキまで描かれているという細やかさ。
さらに登場人物のファッションにも注目です。オオカミさんはいつでも緑と赤の縦じまベストに緑のズボンですが、キツネは毎回違っていて、どれも素敵で楽しめます。今回の前半では服というよりも、ほとんどサイコロの仮装のようなユニークさです。後半のイカ柄の甚平もなかなか粋です。
「ごめんね ともだち」では、オオカミさんとキツネが大喧嘩をして、気まずい数日を過ごしながら、仲直りするまでの様子が描かれています。読み聞かせている大人には、遠い昔の似たような経験を思い出させます。
そして横で笑いながら絵本を楽しんでいる息子にも、このような喧嘩や仲直りの日々が始まっていることでしょう。できることなら、様々な経験を経て、互いに支え合える大事な友人を見つけてほしいと、少し先のことにまで想いを巡らせるひと時でした。