7歳と9歳に読んだ。
「子どもには難しいだろう」と敬遠していたが、自分のために借りたら子どもが手にとり、寝る前の読み聞かせに持ってきていた。
最初はどこの地方だかまったくわからず。
アイヌ、モンゴル、フィンランドのサーメ人などを連想しながら読んだ。
あとでヒョウ?が出てきたので、ようやくロシアかと。
人間の手技の限界に挑戦するような細密画で、自然の美しさと厳しさをあますところなく表現している。
細密というのはときに遠近感に乏しくなる。
この本もそういったきらいはあるが、画家の体温を写しとったかのような迫力の前に、読者として屈服する。
文章は神田利子氏。
オノマトペは直訳かもしれないが、じゅうぶん名文だ。
「しかよ、おれの兄弟よ」が各所に入る。
声に出して読んでいると、抑揚がつけやすい構成になっていることに気づく。
これでは自然に読み手にも熱がこもってしまう。
絵と文章が同じように沸騰していると、読み手の私も引きずられてしまう。
子どもたちを置いてけぼりにしてはいないかと心配したが、子どもは子どもで、この舞台装置に圧倒され、眼を見開いて最後まで静かに聞き入っていた。
子どものころにこの絵本に出会えるのは幸せだ。
わが子に、一生の間に幾度となく開いてほしい絵本。