小学校の教科書で読んだ記憶があるのですが,本当に久しぶりに読みました。息子も,幼稚園の読み聞かせで聞いたのか,あらすじを知っていました。
兵十が病気の母親のためにとったウナギを、いたずら心からつい逃がしてしまったごん。ごんは,その償いのため,毎日兵十に栗や松茸を届けます。
話の内容は,よく知っていますが,大人になって読んでみると,ごんと兵十の孤独が,ひしひしと伝わってきます。ごんも親を亡くし,兵十もたった一人の肉親である母親を亡くし,その二人が心を通じあえたばかりでの悲劇。やはり,心にしみます。
新見南吉が,口伝をまとめ創作したという記憶から,語り手が話を進めると思いこんでいましたが,実際はごんの視線で物語が進行します。そのため,ごんの心の動きがよく分かります。いたずらをしたことへの後悔,やさしさ・・・本当に「人間らしい」気持ちの変化が新鮮でした。
息子は,撃たれたごんが可哀想だと言っていましたが,これから成長し,何度か読むごとに,ごんと兵十の気持ちを理解していくのだなと,何故か寂しいような気持ちになりました。
黒井健さんの絵は,きつねの毛の質感が感じられる繊細な絵で,本当に幻想的で素晴らしいと思いました。
皆さんも,よく知っているお話だと思いますが,是非もう一度読んでみてください。