子育て中に双子娘によみきかせようと探していたら廃版になっていて本当にがっかりしたおぼえがあります。復刊バンザイ!
だから実は7歳というのは、私が読んでもらった年齢です(昔すぎてだめかしら)。一度読んでもらっただけで、ほとんどストーリーをおぼえてしまいました。それくらいおもしろかった!
ビッケは勇猛果敢なバイキング、北欧の荒れた海に乗り出し、外国の沿岸を荒らしてまわる一族の少年、それも族長の長男。
当然、無鉄砲で野蛮で何よりケンカが好きで恐ろしい顔をつくれる「強くて乱暴な男の子」像を求められるのですが、これがひょろっとした頭のよい平和主義者の男の子。
毎日大人からも子どもからも怠け者、役立たずとばかにされて見下され、族長のお父さんからも嘆かれているのです。
でも、とってもかしこいビッケはそんなこと気にしません。戦いはきらいなのでみんながあきれて襲撃につれていかれなくて、ちょうどいいと思ってさえいるのです。
ビッケの平然とした態度とその考え方が私には印象的かつ衝撃的でした。
「勇敢で無鉄砲なのはただ考えがたりないってこと」
「なまけたいと思った人が色々便利なものを発明したんだよ、ねじとか台車とか」
「頭をつかえばなんだってできる」
といった感じで、7歳の時の自分にとっては、本当に目からうろこでした(実際の文章はうろおぼえですが)。
ビッケシリーズの中ではこの「小さなバイキングビッケ」と「弓矢」が気に入っていました。アニメよりも本を先に読んでいたのだと思います。
アニメは3回ほど、偶然見ただけですが、原作どおりのエピソードで画もかわいかったと思います。色もよかったですね。
物語では、まず、シリーズのはじめの方のエピソードが気に入りました。
一族の大人が、旅商人に、白い砂を塩だと売りつけられてしまうのに、ビッケは即座に見破ってしまうのです。そのかしこさと機転に私はすごく感動しました。
(物語の中では、ビッケのすごさを誰もわかってくれなかったけれど)。
どの話もユーモアたっぷりで、強くて考えなしの族長や肝っ玉かあさんや、わかりやすくマヌケで乱暴なバイキングたちや、待ち構えるいばった王様や領主たちがくりひろげる大騒ぎの中、びくびくしながら知恵をふりしぼるビッケが最高でした。
読んだらすっきり爽快!胸がすっとします。
特に好きだったのが、「関税と称して、せっかくのエモノをとりあげてしまう役人達の海峡をどうやって切り抜けるか」という話。
もう1つ、好きなのはビッケがしぶしぶでかけた初めての遠征の話(15歳だったかな?)。
それにせっかくそこで、今までとうってかわって尊敬されるようになったのに、翌日、今まで出た中で一番チビのおおかみに追いかけられて逃げまくったため、子ども達の中でのビッケの評判はまたもや奈落の底へ、というエピソードも好きでした。
この2つの話は確か「小さなバイキングビッケ」に入っていたと思います。
ただ 「ビッケ」シリーズはストーリーがおもしろくても、全体として分量が多く、場面転換が何度もあるので読み慣れていないとわかりにくいかもしれません。
最初は大人が読んであげたほうがわかりやすいと思います。
私は中学くらいまで、ずーっと楽しんでいたと思いますが、一番よく読んだのは小3〜5年生くらいでしょうか。
自分で読むにはやや難易度が高目なため、大のお気に入りの本でしたが、「自信を持っておすすめ」ではなく「なかなかよい」の評価です。
私自身は、ストーリーを楽しんだだけではなく、ビッケの生き方、つまりヨンソンの考え方から大きな影響を受けたと思います。
例えば、集団の中でほめたたえられなくても(むしろばかにされても)、自分は自分らしくあれば、それで生きていっていいんだし、
みんながばかにする自分らしさがいつか家族やその集団を助けることだってあるかもしれないんだな、とぼんやり考えるようになりました。
ビッケのひょうひょうとした生き方と天才的な発想の転換、家族への皮肉で的確な、それでいてあたたかい見方、暴力をいやがる性質、それにとびでたひざ小僧がとっても好きでした。
私の初恋の人かもしれませんね。
よかったらビッケに出会って好きになってもらえたら、とても嬉しいです。