祭りに友達と出かけて、下駄を買った文六ちゃん。
晩げに下駄をおろすと狐がとりつくと言われ、帰り道によそよそしくなった友達と不安になった文六ちゃん。
それを知った母親の文六ちゃんを包み込むようなやさしさ。
心あたたまる物語で、とても印象強いお話です。
物語が情感たっぷりの内容だけに、絵の描き方ひとつがとても重要なポイントになる物語です。
それは絵の作者の、物語に対するイメージ表現なのでしょう。
で、つい比較してみたくなる性分を抑えきれず、鎌田暢子さんの『きつね』を続けて図書で購入することにしました。
長野ヒデ子さんの作品は、表紙にある狐の絵と、「狐」の漢字に表現されているように思います。
長野さんの絵は、面白さと人間味と、少しあくの強い描き方で自分の世界に引っ張り込んでしまうような感じです。
要するに長野ヒデ子ワールド。
同じ新美南吉さんの「きつね」を描きながら、別の世界の絵の感性かと思います。
ついでながら、同じ文章でありながら鎌田さんの文は、ひらがなが多用されているように思いましたが、長野版の『狐』は漢字表現が多い。
文字のタイプの違いも加えて、少し硬めの物語になっていると思います。
新美さんの話とマッチしているのは鎌田さんの方かも。
長野さんごめんなさい。