働き続けて7年経って、家に帰りたいと暇を願い出たハンス。
ご主人は、「7年間よく勤めてくれたから」と頭ほどもある金の塊をひとつハンスにくれました。
さて、そこからはハンスが家に帰るまでの顛末です。
金が馬に替わり、馬が牛に替わり、牛が豚に替わり…、そして最後に何にもなくなっちゃった。
不思議なもので、バナーデット・ワッツさんの『しあわせなハンス』を読んだときには、ハンスはそれでもしあわせだと思ったものですが、フェリクス・ホフマンさんの『しあわせハンス』を見ていると、「こいつバカじゃないの」と思ってしまったのです。
グリムの童話をギュッと凝縮した顛末物語が、絵本の下にまるでテロップのように流れていきます。
ギュッと凝縮した分だけ、ストレートに話が流れていきます。
そして、絵が左から右へ、右の端から次のページへと絵巻物のように展開していきます。
ハンスの気持ちより、事実経過が淡々と流れていくのです。
それに、なんと途中で出会う男たちの曲者らしさ。
どうしてもハンスが騙されている感が強い。
そしてラストシーンです。
ノー天気に「まったく、ぼくぐらいしあわせもんは、てんかにいないや」なんて自己満足したハンスの先に自分の家。
塀の向こうにお母さんが手を振っているけれど、その後どうなったんだろうなどと、意味深い終わり方までしています。
ひょっとしたら、この後「ふこうなハンス」が始まるかもしれないと心配になりました。
印象が全く異なって感じられる『しあわせハンス』と『しあわせハンス』。
良かったらお試しください。
わたし的には、ホフマンさんの作戦勝ち。
せたていじさんのアシストばっちりといった感じでした。