バートンさんの絵本ですが、『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』の動に対して、『ちいさいおうち』は静。
『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』が幼児期にウケたのに対して、『ちいさいおうち』の反応はイマイチ。
今読み直してみると、この本はゆったりと話が聞ける時期にお薦めだと感じました。
遠い昔に田舎で建てられたちいさなおうち。
リンゴの木や、月や星たちと仲良く暮らしていたのですが、次第に町が近づいてきて、町に飲み込まれて、小さな町から都市へと変化していきます。
ちいさいおうちが本当に好きだったのは静かな田舎。
まごのまごのそのまたまごが通りすがりにこのちいさいおうちを見つけて、自分の思い出にある静かな風景がすっかり様変わりしてしまったことに気づきます。
ちいさいおうちはまた、自然あふれる場所へと引っ越しさせてもらえました。
この絵本の中で、時間はとてもゆったりと過ぎていきます。
変化やリズムを望む子供たちには少し退屈かもしれません。
このゆったり流れていたのが時代です。そして、都市化とともに時間も人間もどんどん忙しくなりました。
この絵本はそれを見事に表現した社会史です。
『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』の絵が直線的に感じられたのに対して、『ちいさいおうち』はとてもまろやかです。
そして『いたずらきかんしゃ ちゅうちゅう』でも感じましたが、文の配置とレイアウトがとても見事。
読み聞かせで離れた位置からは風景と同化して見えるかもしれません。
この2冊を10年(?)ぶりに再読して、自分と息子にも同じように時が通り過ぎたことを感じつつお薦めします。