ゾウは、死期を感じると群れを離れ、墓場へ向かうという話を聞いたことがある。
そして、ゾウの墓場には先に死んだ多くの仲間達の骨があるという。
動物界の法則なのだろうか。
この絵本はそんな事をモチーフにしている。
死期を迎えたら訪ねていくというゾウの森。
その手前には深い谷を越えていくための吊り橋がかかっている。
吊り橋から落ちたらどうなるんだろう。
人間で言うと三途の川を渡りきれずに成仏できないということだろうか。
この絵本のゾウさんは、吊り橋が壊れているので橋の前で立ち止まります。
仲良しのネズミさんの言葉で引き返しますが、年をとるということはこういう事なのだろうか、今までのような生活が出来なくなります。
一生懸命ゾウさんの世話をするネズミさん。
やがてネズミさんは、ゾウさんにとってあの橋を渡ることが幸せなんだと感じるようになります。
橋を頑丈に直して、ゾウが吊り橋を渡る手伝いをします。
死に向かわせるのです。
そして、ゾウを見送るとホッとして笑顔を見せるのです。
幼い子どもにも、この展開は象徴的なようです。
自然の摂理。人は死ぬんだと。
誰もが吊り橋を渡らなければいけない。
どうせなら、ちゃんと吊り橋を渡らせてあげよう。
それがその人のためなんだと。
柳田邦男さんの翻訳する絵本は奥が深い。
大人にも考えさせる絵本でした。