1959年第1刷、2002年第57刷発行。
長年働いてきた機関車のやえもんは、新しい時代の技術を取り入れた列車たちのピカピカの姿と性能に差をつけられ、バカにされる。面白くなく不機嫌なやえもんは、つい煙突から火花を出したまま走ってしまい、近隣の農家の稲藁を燃やしてしまった。怒った農民たちは、やえもんを壊そうと詰め掛けるが、駅員たちになだめられる。いずれにせよ老朽化したやえもんは、廃棄処分にされることに決まるのだが…
長年一生懸命に働いてきたのに、報われるところなく、新入りたちにバカにされる。不器用で頑固な老人にありがちなパターンを、物語の世界で単純化して見せられる。やえもん機関車も昔は最先端の技術で、元気に働いてみんなの憧れだった時代もあった。だが、時代に対応できず、今の通信機器などのようにアップデートできないために、どんどん時代遅れに。
体も動かなくなり、不調な場所が増え、肉体的にも精神的にも厳しい状態で働き続けなければならない。この物語は、大人になってからでないと作者の言いたかったことはわからないかもしれない。
しかし、小さいうちに心に留めておけば、物や生き物、人間に対して思いやりが持てるかもしれない。
50年代の漫画を思わせる、温かみのある絵が、余計に人情味のある雰囲気を盛り上げる。心温まるラストで、読んでよかったと思える作品。