この絵本の作者は、先日国際アンデルセン賞の作家賞に選ばれた角野栄子さんです。
作家賞は日本人として、まど・みちおさん、上橋菜穂子さんに続いて、3人めになります。
角野さんの代表作といえば、『魔女の宅急便』になるのでしょうが、たくさんの作品を書かれていますから、手にとってみるのもいいと思います。
角野さんは受賞後のインタビューで「自分の言葉を持つことは世界を広くしてくれる」といい、「読書が子どもに与えるのは言葉」で、言葉は自分を表現するための力になると語っています。(3月31日付日本経済新聞朝刊)
それは長い物語だけでなく、この作品のような絵本でも同じだと思います。
この絵本では春に一年生になるさっちゃんという女の子の、入学前と入学式当日の様子を描いていますが、絵本ですがたくさん文字がある作品になっています。
明日入学式という前の夜、たくさん星が出ている空を見上げながら、さっちゃんとお母さんが会話をする場面があります。
何気ない三つの会話の中に、さっちゃんの一年生になる不安と期待と喜びが込められています。そんなさっちゃんにお母さんの答えも短いけれど、暖かいものです。
きっとこのようにして幼い読者は言葉の力を自然と身につけていくのでしょう。
一年生になったさっちゃんがこれから出会うだろうたくさんのことがらに祝福をおくりたくなるような絵本です。
そして、そんな角野さんの文章に負けないくらい、大島妙子さんの絵も素敵です。