最初1996年にこどものともから出版され、2005年には年中向きとして再発行されたとありますが、ハードカバー化されていないようで、手軽に読めないのは寂しいですね。
西巻茅子さんが絵を描いたとあり、女の子っぽい作品を想像しましたが、富安陽子さんの豪快なストーリー展開と男の子のケンカが題材とあって、一見子どもっぽく映った絵でしたが、見るほどに幼稚どころかすごくワイルドな印象に変わりました。
主人公の男の子たちの表情からは、全くケンカをするつもりはなさそうですが、ふと頭の上にアカとアオの色したケンカオニがくっ付けば、売り言葉に買い言葉でオニに言わされるがごとく、ケンカが勃発してしまいます。
ぬいぐるみがぶつかったという他愛のないことから、カエルやヘビやライオンが登場し追いかけっこが始まります。息子はこのあたりから絵本に引き込まれ、まだまだ出てくる大物たちに大喜びしていました。
最後に出てくる親分には意表をつかれましたが、みんなが誰かに操られている関係は面白く、意地になって相手より大きなものを繰り出す様子は「もっとおおきなたいほうを」を連想して楽しいですね。
でも最後は、片方が「ごめんね」と言えばすぐに「いいよ」と返してくれるあたりのさっぱりしたところはやっぱり男の子だなと感じながら、安心して読むことができました。
【事務局注:このレビューは、こどものとも年中向き 2005年02月号刊行 に寄せられたものです。】