最初手にした時、タイトルの“いけない”に?でした。
原題の“TWO BAD ANTS”で納得。
オールズバーグさんの画力の奥深さを改めて認識する作品でした。
他の作品とは画風が異なりますが、お話の迫力を最大限に表していると思います。
小さなアリの世界のお話です。
一匹の探しアリが巣穴に持ち帰った“クリスタル”の美味さに女王アリが喜び、さっそくみんなでそのクリスタルを求め、探しアリを先頭に長い旅に出ます。
“クリスタル”とは?と疑問を抱きながら読み進め、森の先の人家の壁をよじ登り始め、お話が見えてきました。
小さなアリの目線から見上げる人家の窓も、なるほどアリにはこう見えるに違いないと思わせられます。
そして、いつの間にか読みながら私もアリのサイズになっていました。
やっとたどり着いたお宝の“クリスタル”の海の中から、一つずつ抱え帰路につくアリ アリ アリ!
しかし、“クリスタル”を口にし、至福の味を知ってしまった2匹のアリは、巣穴へ帰ることをせず・・・。
この後の、人間社会にもぐりこんだがために2匹のアリの遭遇する災難の数々に、何度もうダメだ〜!という気持ちにさせられたことか。
彼らのこの必死な時間は、次の運び屋の仲間がやって来るまでの長い時間であったことが、読んでいて解りました。
コーヒーを啜る人間の口のアップ、カップの中で洞窟(口)に吸い込まれないよう喘ぐ2匹にやはり手に汗握ります。
文章が、あくまでもアリの観察眼による表現なので、読み手としてはそれもまた楽しい。
村上春樹さんの訳が、この作品でも素敵でした。