点描画というのでしょうか。たくさんの点を使って描かれた絵です。お話の時代背景は今よりずっと昔で、さらに、話の内容は暗いのですが、絵にはモダンさやちょっとユーモラスな感じも見受けられます。味のある絵で、私はとても好きです。微妙に違う色の点々が織りなす味わい深い色調にも、女性の画家さんらしい優しさが感じられます。
「猫の事務所」の四番書記のかま猫は、他の書記たちからいじめられています。体が煤(スス)で汚れているのが原因のようです。かま猫がいじめられている様子は、現代の人間社会のいじめと同じで胸が痛みました。
何かの弾みで出来上がる、どうしようもない集団の中の力学のようなものを感じます。ここを、うまく突破するには、何か大きな力が必要ですが、ここでは獅子が登場しました。破壊的で、良い突破方法とは思えませんが、宮沢賢治先生にも良い解決方法は見つからなかったのでしょうか?
ただ、獅子が登場した時に、泣くのをやめて真っ直ぐに立って、キリッとした表情で見上げるかま猫の表情がとても印象的でした。表紙の、大きな目に涙をいっぱい溜めた かま猫とは違います。かま猫には、新しい場所で 新しい一歩を踏み出してほしいなと思います。