魔法には、「嫌なまほう」をかけられて、『とけてよかった〜』というものと、「素敵なまほう」をかけられて、『とけてちょっと残念』っていうものがあると思います。
このお話は、後者かなと思うんですが、でも、ちょっと『残念さ』が違うような気がします。残念だけれども、心の奥にしっかりと根付く新しい体験による“自信”と“充実感”。そして、一生忘れない大切な思い出。
ヒートアイランドのど真ん中に住む都会っ子兄弟ケイとユイ。
共働きの両親に、留守を任され、暑くだるくメリハリのない生活。
そんなとき、海山の自然に恵まれた田舎のおじさんからの、「おいで」のはがき。そして、二人は「さらば、東京」……。
何よりも絵が素晴らしい。
東京での兄弟二人だけの暑い日々は、ほんとうにつまらなさそうです。なかでも、二人でプールの後の水着を干すシーンは、ジーンとしてしまいました。
東京から田舎へのページはスピード感が伝わります。
田舎の町並みや空の色は、私でも郷愁を感じてしまいます。
特に圧巻だったのは、”せみしぐれ”ならぬ“せみ豪雨”。
『あ〜、こういう瞬間、私も経験したことがあるな〜』と思ったら、胸にこみ上げてくるものがありました。
我が家は、今年も夏はがんばります。
近場にたくさん見つけられそうです。まほうの夏。
息子は、「こんな夏いいよね〜。今年、ばあちゃんちに一人でいってみるかな。」ですって。