毎日たくさんの本が出版されています。全部を読むことは到底できません。きっと大切な本も読まれないままどこかの本棚にしまわれているのでしょう。
絵本の世界でも同じです。子ども時代に読んだ絵本はほんのわずか。子どもが生まれて、娘たちと読んだ絵本もあるけれど、それでも読まれなかった絵本はたくさんあります。
この絵本もそんな一冊です。
1989年に出版されています。ちょうど娘たちが小さかった頃の絵本ですが、読んであげられませんでした。
でも、こうして、初めて出会えることができました。
きっかけはこの絵本のあとに出た『あっちゃんのはたけ』を読んだことです。
春から小さな菜園を始めて、「はたけ」という言葉に魅かれて、手にしたのが『あっちゃんのはたけ』でした。野菜嫌いのあっちゃんがおばあちゃんの畑を手伝うことで、野菜が大好きになるというお話。
そのお話にはどうしておばあちゃんが畑をつくるようになったのかというもっと前のお話があったのです。それが、この絵本です。
土いじりが大好きなおばあちゃん。けれど、家にはそんな場所がありません。
ある時、ものほしだいの向こうに何も手入れされていない土手を見つけます。
ここをなんとかできないものか。おばあちゃんは土手にはしごをかけて、耕しはじめるのです。
なんというおばあちゃんパワーでしょ。
水を運ぶのも肥料を運ぶのも大変です。でも、おばあちゃんはなんとか苗を植えて種もまきます。
ところが、ある日おばあちゃんははしごから落ちてしまいます。
さあ、おばあちゃんのはたけはどうなってしまうのでしょう。
作者のおおしひろみさんは1954年生まれ。ちょうど私と同世代。
とてもかわいらしい絵を描いてくれます。
おばあちゃんの表情はどうでしょう。とてもやさしそうで、それでいてしっかりもの。
こんなおばあちゃんに育てられた野菜たちはどんなに美味しいでしょう。
ぜひ、『あっちゃんのはたけ』と一緒に読んであげて下さい。
おいしい野菜を食べたあとのように、幸せな気分になります。