彼岸花は「歳時記」では季語「曼珠沙華」の傍題となっています。
「曼珠沙華どれも腹出し秩父の子」。
これは、昨年(2018年)亡くなった俳人金子兜太さんの句です。
この花は、「歳時記」にも「地方によってさまざまな呼び名がある」と書かれていますが、かがくのとも絵本の一冊である甲斐信枝さんのこの絵本にもたくさんの名前が紹介されています。
「きつねのかんざし」なんていうのはかわいいもので、「うちにもってくるとかじになる」なんていう名前もあるそうです。
この花の不思議なところは、必ず決まって秋のお彼岸の時に咲くということです。
それに、葉っぱも出さないで花が咲きます。
根はどうなっているかというと、球根。つまり、そこから「にょきにょき」と茎が伸びていくのです。
では、葉はないのかというと、花が枯れてから葉が茂るそうです。その時には赤い花を見ることがないので、それが彼岸花だったってわからないかもしれません。
そのあと、次の秋まで土の中で新しい球根を作ったりしています。
大人でも知らないことが、この絵本で丁寧に描かれています。
植物画に関しては定評のある甲斐さんですから、植物の本当が描かれているし、それでいて絵画としての魅力もあります。
山里に咲く彼岸花の群れの絵など、とても素敵です。
子どもだからこそ「本当」を教える大切さをこの絵本から感じます。