美しい絵が、ストーリーを語るシーンの多い作品です。
大きな海辺のお屋敷に、家政婦さんと二人過ごす少女ベル。
両親は家をあけがちで、そばにはいつも家政婦さんのビーがいてくれた。
一週間は、曜日毎に決まった仕事を二人で楽しくした後、海辺へ出かけます。
海辺での様子は、文がなくとも二人の素敵な時間が、伝わってきます。
それにしても、親が多忙のあまり家政婦さんと二人っきりの生活というのも、読んでいて胸が苦しくなります。
ビーとの毎日の家事の時間に覗かせる、ベルの屈託がなくあどけない表情には、明るさとある意味心の安定のようなものがうかがえますが、底知れぬ親への思慕もあるようにも感じられました。
終盤に起きる事故に、心臓を掴まれるような驚きを覚えましたが、そのあとのビーの精神的疲弊ぶりに涙が出ました。
ビーの部屋に飾られたジャーマンアイリスを素敵だと思いましたら、ラストで、ライターとなったベルの部屋にも飾られていて感動しました。
そして、彼女の胸にかけられたペンダントの写真が、見返し(後)にあり、スチュワートさんの自伝であることにも気づきました。
献辞の文が、胸に響きました。
書かずにはいられなかった作品なのでしょう。