子熊を育てて、大きくなったクマを神の国に帰すというイオマンテの儀式は、アイヌの人でなくては解らない世界なのでしょう。
兄弟のようにして育ったキムルンを殺して食べるなんて、どうしても神聖な儀式と食肉が頭の中で対立してしまいます。
山に去った(逃げたのではなく)キムルンに、神の国に帰れなくなったと思う少年の気持ちは複雑です。
成長した同士の再会で、少年に射って欲しいと思うキムルンの気持ちも美意識に尽きるような気がします。
最後の幻想的なシーンをどの様にとらえるかで、話が違ってしまうのですが、あべさんは判断を読者に委ねたのでしょうか。
解説も味わい深いものでした。