事故で死んだ落語家が成仏できず猫に乗り移る。猫はおじいさんに拾われ、小学生の七海の家に来た。七海は親友のしおりから変な手紙を受け取り、実は嫌われているのだと悩む。しおりを問いただした時に「絶交」と言った言葉を他のクラスメートに悪用され、ラインで誹謗中傷されてクラスで孤立していく…。
成仏できない落語家の切ない恋の物語と、クラスで孤立してしまった少女の物語の二本立てが、交差する。物語の登場人物には、それぞれの物語があり、それぞれがご縁があって、関わっていくところに面白みと味わいがある。
生きていると、いろんなことがあるよね。小学生は小学生なりの悩みがあり、それぞれの家庭の問題があり、個人の生き方を貫くときの葛藤があり、他人同士の関係にもあれこれある…小学生向きの話なので、分かりやすく書かれているけど、きっとここには書かれていないいろいろな悩みや喜びもあったのだろう。そのように思わせる力が感じられる、読み応えのある作品です。
なかなか泣かせる場面もあり、喜怒哀楽が全部楽しめる構造となっています。
落語を知っていると余計に楽しめますが、知らなくても楽しめるように工夫されています。(本文中に話のスジが書いてあったり)
私は落語が好きで、聞きに行ったりする事もあるので、よりリアルに感じられました。
※物語の小道具として使われる話は「へっつい幽霊」です。
この本は、小学生の友達から勧められた作品です。
年の離れた友人は、落語は「笑点」の大喜利くらいしか知らない状態で読んだそうですが、しっかり内容を理解できたようでした。
また、ラインなどによる誹謗中傷が勝手に独り歩きして、いじめにつながる問題についても触れられており、考えさせられるところも、作者の良心を感じられて素敵でした。