傑作ということでよく目にする絵本で、うちの絵本棚にもあります。
あまりに傑作ともてはやされ、王座に君臨しているこの本に星三つで水を差して申し訳ない気もしますが、私には本当に星三つでした。
大切にされたおもちゃ=本物
というこの絵本独特の概念…それは別に構わないんですが、だからと言って本物の生身のウサギになれるか?と言うと、飛躍し過ぎでどうしてもそこはつながらない。
絵本だから奇跡があるのは問題ない。
だけど、生身のウサギになれることがこのウサギの切望した願いだったという訳でもない。ここが私にとって重要なんですよね。本人が切望したことが叶ったというならばそれは夢があってよかったのかもしれませんが。ウサギ自体、本物の意味が分かっていない。
結末としてはそれも一つの在り方で問題ないんですが、傑作かと言われると…未だにピンときません。
実際問題絶対に有り得ない話なのに絵だけは非常にリアルで、そして場面一つ一つの色彩が非常に暗い。そこに突拍子もない奇跡が起きるので、そのアンバランスさに違和感を感じるのかもしれません。
ストーリーが重く、絵がリアルで暗いトーンなら、奇跡はもっと想念的なものであった方がしっくりくる。
子供に読んでやるのに、リアルな世界観の絵を見せながら、あまり有り得ない話を伝えたくない…という気持ちです。
扱っているテーマが『命』に関わる場合は特に。
例えばフランダースの犬のラストや、幸せの王子、マッチ売りの少女など、死後の世界や来世で幸せになることが予想できるような余韻を残す終わり方だと、子供にも奇跡について想像の余地があるんですが、生身のウサギに変身してしまうとイメージがそれ以上広がらないんですよ。
本物のおもちゃとは、その子供の心に永遠に生き続ける、というような扱いだったらよかったかな…。
なんだかんだ言っても泣ける話なのは間違いないんですが。
捨てられ燃やされるという展開には泣けても、捨てられる前日に本物に変身するというラストに涙が引っ込む感じでした。