表紙からして物凄いインパクト。何かありそうと思わせる絵本です。
「モチモチの木」という枝の絡まりあった、深さと怖さと威厳を持った木を描くのに、滝平二郎さんの切り絵はこれ以上ないくらい合っています。豆太じゃなくても、夜中にこんな迫力のある木を見るのは御免こうむりたいと思ってしまいます。
モチモチの木の迫力ある姿を中心に、この本には全体的に重い感じ・息を潜めた感じが漂っているような気がします。夜になると、物音一つしない静寂がやってくる、こんな緊張感が滲み出ています。昔の田舎はこんな風だったんだなと思われます。
こんな緊張感や重さがずっと本を支配していく中で、突然モチモチの木に灯がついているシーンで張り詰めた空気が一変して柔らかくなり、その一瞬の変化故に豆太の感動が読者の感動として押し寄せてくるのです。
絵本の読み聞かせ講座を受講した時の講師の方は、最後が「次の日からも じさまを起こした」という元と変わらない状況なので、成長がないと、この本を読み聞かせには適さない本としていました。
でも、この重苦しさや緊張感は、なかなか他の本に見出すことは出来ないことだけでも、この本を読む価値は充分にあると思います。