迫力ある絵と心揺さぶるストーリー。
憎しみと慈愛が交差するトラの表情が見事です。
人間に我が子を殺されたトラ。
我が子をトラに差し出す母。
トラに優しく寄り添うウェン王子。
勇気と慈愛に満ちたこの素晴らしい絵本に、明日への希望を感じます。
憎しみは憎しみをうみ、相手への暴力となる。けれど報復のため、どんなに相手を攻撃したところで、
一瞬たりとも満ち足りた気持ちが蘇ることなどない。
負の連鎖は止まらない。
我が子を殺されたトラを、我が身に置き換えてみれば、到底相手を許すことなどできない。
けれど、この絵本は教えてくれる。
相手の身になり考え、愛を持って受け入れようと努力することで、道は拓けていくのだと。
わたしには母がふたりいるというウェン王子の言葉が心に響く。
この素晴らしい絵本が、世界中で読まれ、平和への道しるべとなってくれますように。