言わずと知れた新見南吉さんの名作。
誰しもが読んだ懐かしい作品です。
世に出たのは、1932年1月の赤い鳥に掲載された時ですが、何とまだ17歳だったのですから驚きです。
南吉さんは、1943年に結核で亡くなるのですが、29歳という若さだったので、作品が少ないというのも頷けます。
亡くなった後に発表された童話集に収められていたのが、「てぶくろをかいに」
そんな背景を知ると、この作品の凄さが実感できることと思います。
また、宮澤賢治と作風が好対照で、「北の賢治、南の南吉」と呼ばれています。
物語の主人公は、ごんぎつね。
兵十という村人が、川で魚を取っているのに出くわしました。
兵十がいなくなった時に、ごんぎつねは、いたずらがしたくなり、びくの中のうなぎや魚を川に投げ込んでしまうのです。
兵十に見つかったのですが、ごんぎつねは逃げ切ります。
十日ほど経ち、ごんぎつねは、兵十のおっ母が亡くなったと知り、うなぎを食したかったに違いなかったのに、本当に悪いことをしたと悔いるのです。
その後の展開も良く知られたところですが、特に有名なのは、
「ごん、お前だったのか。いつも栗をくれたのは。」
という兵十の言葉でしょう。
物語の終わりの言葉は、何とも切ないもの。
心に染みるというのは、こういうことを言うのだと思います。
この作品は、旧仮名遣いを新仮名遣いに改めた他は、原文のままだそうです。
その南吉さんの文章に、黒井健さんの淡い幻想的な絵が、見事なまでにマッチしていて、見るものの心を揺り動かすことでしょう。
小学校の教科書にも登場しますが、こうした名作は、是非、自ら読んで感じて欲しいと思います。
数多い「ごんぎつね」ですが、やはり、この作品が特にオススメです。