実話を物語にしたものですが、リアリティがあります。このお話は戦争が終わってアンナにおかあさんが赤いオーバーを買うのにどれだけ苦労して手にいれるのかが書かれています。爆弾や銃撃戦こそないものの、この物語の行間で戦争の影を感じることができます。たとえばアンナとおかあさんはでてきますが、最初から最後まで見てもおとうさんの姿はでてきません。戦争で重い病気になって苦しんでいるか、死んでしまってもういないようにも感じます。
そして、このアンナの家はおじいさんの金時計が象徴されるように、戦争が始まる前は裕福な家庭だったのではないでしょうか。そしておじいさんの形見の金時計を売るほど、欲しい物は手に入れられなくなり、高価なもので交換しなければならないほどものがないし、貧乏になったとも感じられます。
アンナもできるなら早く赤いオーバーを手に入れたいのに2年もかかってしまった忍耐、そしてやっと赤いオーバーを手に入れた喜びが表紙になっています。
物が有り余って、欲しいものがすぐに手に入る子供たちにこんな時代もあったのだよと教えられたらいいなと思います。