この作品を息子に読み聞かせようと表紙を見せたら、「あ!学校で読んだことがあるよ。大きなうちより小さなうちの方がいいんだっていう話!」と答えが返ってきました。よほど印象深かったのでしょう。
「大人になったら世界一大きなうちがほしい」と言うちびかたつむりに、お父さんが、昔同じように大きなうちを欲しがったかたつむりの話を聞かせてやります。
どんなに大きく美しいうちを持っても、結果動けず死んでしまったかたつむり・・・それを聞き、ちびかたつむりも小さいうちにしておこうと思い直します。
人間の世界でも、必要以上に大きな家に住んだり、立派な車に乗ったり、あるいは美しく着飾ったりすることがありますが、何事も身の丈にあった生活が一番、欲張りすぎるのはよくないことを考えさせられる内容でした。
でもそれ以上に感じたのは、「真の幸福とは何ぞや」というもっと根本的な人生観のようなものです。
ちびかたつむりにとって、最初は世界一大きなうちに住むことが、自分にとっての幸せだと思っていた。でも、たとえうちは小さくとも、美しい自然や素晴らしい世界を思い切り自由に見て回れることが、もっと幸せなことだと気づいたのです。
現代には、物質的には恵まれていても、幸せを感じられない人が数多くいるように感じます。そういう人にこそ、是非読んでもらいたい作品だと思いました。
また、レオ=レオニの作品を幾つか読んでみましたが、作品によって抽象的な挿絵だったり、色々な技法が施されてあったり、どれも美しく工夫があって素晴らしいと感じました。
特にこの作品では、最後の場面の自然の美しさが印象的です。小石や松ぼっくり、木の幹などが細部にわたって描かれ、目を見張るようでした。