古文というと解らないなりに部分かじりした、中高のつまらなかった授業を思い出すのですが、現代語訳で通読してみると、なんとも刺激的な世界だったことを痛感しました。
それは、名だたる作家たちが遊び心と本気モードで、自分の世界に作品を、引きこんで書いているからでしょうか。
竹取物語のかぐや姫は、いかにも人間臭く計算高く感じました。
歌を基軸に描かれた伊勢物語では、男女の様々な心風景が、歌に現実感を持たせていました。
堤中納言物語では、なんともあっけらかんとした男女関係に、その時代の道徳観の薄さを感じました。
更級日記では、女の一生が現代とあまり距離感なく描かれていました。
中でも圧巻は土佐日記でしょうか。
あえてひらがなの文体にこだわった上で、女の心で綴ろうとしても、自分の男がついつい顔を出してしまう、紀貫之になりきって書かれた文章は、読みづらさの中でとても新鮮でした。