熊を撃ってその皮と胆を売って生きている小十郎という男の話です。
他に現金収入にすべき仕事もなく、熊に申し訳ないと感じながら、詫びながら、熊を撃つ毎日がしみじみと描かれています。いっぽうで、その熊の皮と胆を売りに町へ行くと、荒物屋に不当に安く買いたたかれる様子が腹立たしげに描かれます。
何か他の方法(他の商人に売るなど)を見つければ良いのにという「僕」の意見には読者も同調してしまいます。ところが小十郎は、安く買いたたかれても、その後で荒物屋にご馳走になることですっかり機嫌良くなっているようです。そのあたりが、彼の無知ゆえの愚かさへの哀れみを誘い、読者はますます腹立たしくなってきます。
最後には熊を撃ち損ねてかえってやられて死んでしまいます。今度は熊が彼に同情するかのような場面が描かれ、大自然の雄大さが感じられますが、同時に、すでに彼が息子と嫁を赤痢で亡くしていること、九十歳になる母親と七人の子供を養わなければならない立場であることを知っている読者は、この後、彼の家族がそれまで以上に貧しく苦しい生活をしなければならないことを想像し、やりきれない気持ちになるのでした。
読後に重たい感触が残る絵本でした。