今でこそ空を飛んだりするSF映画は珍しくないですが、1971年にそんな作品を作ってしまう大川悦生さんはすごいです。
画が赤羽末吉さんで、“おなら”のお話しなら息子が興味を持つと思い選んだのですが、結局は僕が楽しんでしまいました。
とても心に残る作品に出会えてよかったとしみじみと思います。
じっさまの生涯を書き切った作品ですが、じっさまの人生を手放しに良かったと喜び、賞賛できるお話しではないと思います。
読んだ後に「幸せとは何か」を考えさせられる意外と深い童話だと思います。
人並みならぬ“でっかい屁をこく”特技を持ったじっさまは、昔の狭い村には収まりきらない器でしたが、人並みに嫁をもらい幸せに暮らしておりました。しかし突然の不幸を機に、江戸へ出る決心をします。
大都会江戸には、自分よりも遥かにすごい“屁をこく”もの達がそれを“芸”として生計を立てておりました。
やっとじっさまの生きる世界が見つかったと喜ばしく読み進めるものの、展開は激しく変わり、一瞬にして大金持ちから一文無しになったりと、波乱万丈な人生で一体どうなるのか全く先が読めません。
良いこともピンチも“屁”で解決してきたじっさまですが、やがては故郷でもう一度人生やりなおす決意をします。
しかし戻った村は風景こそ昔のままですが、知るものも居なくなってまるで“浦島太郎”のような状況で、胸にぐっと来るものがあります。
読み終えた後には、あのSFのような表紙画(並んで飛ぶ二人)がとても微笑ましく映りました。