幼い頃から親と離れて眠る欧米の子どもたちにとっては、眠る時も肌身離さず持っているテディベア(ここではウサギのぬいぐるみですが)は、特別な意味を持つものだと聞きました。
エミリー・ブラウンにとってのスタンリーがまさにそうなのでしょうね。
最初読んだ時は、エミリーとスタンリーの冒険の荒唐無稽さが鼻について、あまり好きにはなれませんでした。
でも、もう一度読み返して、別の思いを抱きました。
これは、徹頭徹尾、子どもの視点から描かれた物語なのです。
大好きな一生のともだちと、世界を、宇宙を冒険し、軍隊にも女王陛下にも負けない、勇ましい女の子。
それは、エミリーがこうありたいと想像する世界の女の子なのですね。
洗濯され、詰め物を入れ直され、ほころびを繕われ、きれいになったはずのスタンリーを、エミリーは「まったくみじめなありさま」だと表現します。
あれほどウサギを欲しがった女王陛下も、同じ思いです。
なぜならそれは、もう「わたしだけの」スタンリーではなくなったからです。
ラストのページがとてもすてきです。
息子は「人のもの、とっちゃあ、いけないよねえ」と考えこみ、
「でも、この子(陛下)とこの子(金色のテディベア)が仲良くなってよかった」と、にこにこ。
3歳児なりに理解している様子です。
たくさんのおもちゃを買い与えるよりも、一つのおもちゃを大切にする子どもになってほしい、
そんな、自分にとって唯一無二のおもちゃに出会ってほしい、と願ってやみません。