好きな作家の一人であるドン・フリーマンの作品。
1951年の作品なのですが、日本では2007年の初版になっています。
訳は、山下 明生さん。
「ねずみの七つ子シリーズ」や「島ひきおに」といった作品の他に訳者として知られています。
この話の誕生話が素敵です。
ドン・フリーマンとリディア夫人の、記念すべき初めての共作絵本は、二人の生活の中から生まれました。
1948年、ニューヨークから、サンタ・バーバラに移り住んだ夫妻は、操車場のすぐそばのアパートに新居をかまえます。
そのころ、生まれて間もない子供を亡くして、悲しみに沈んでいた夫婦は、操車場で夜中じゅう働いている機関車や、線路脇に見捨てられている青い貨車に、なぐさめを見出します。
そのうち新しい息子の誕生に恵まれ、子供といっしょに線路脇を散歩しては、機関車は貨車をスケッチしたり、線路係からいろんな話を聞き取ります。
その成果が、この絵本の最初の出版につながったということなのです。
お話は、見捨てられた青いしんがり貨車と、小さいけれど一生懸命働く機関車シュッポの友情の物語です。
この手のストーリー展開は多くあれど、この作品は夫妻の思いという背景があるだけにその愛情の深さが違います。
二人(二台)の心のやり取りは、読んでいて共鳴せずにはいられないことでしょう。
クエヨン画のようなタッチの絵は、色数も赤と青を中心に少ないのですが、その素朴さがこのお話に実に調和しています。
文章は長いのですが、幼稚園児でも飽きることなく楽しめるのではないでしょうか。
良書と呼ぶに相応しい珠玉の一冊で、ドン・フリーマンならではの作品です。