巻末のページをめくると美しい音がします。そう、こおろぎぼうやの鳴き声です。なかまのおんなのこに、やっとあいさつができたのです。きれいなきれいなうたごえでうたうことができたのです。この音のしかけにはびっくりしました。最初、図書館で見た時は、誰かの携帯電話かと思ったほどです。しかしこの音のしかけだけにとどまらず、うまれたばかりのこおろぎぼうやが、いろんな虫たちと出会うたびに、お話が進むごとに、少しずつではありますが、成長していきます。そう、イラスト(体の大きさ)もさることながら、心の部分も大きく成長していくのです。こおろぎぼうやが、本当にうたをうたいたくなったとき、あの音色が聞こえるのです。小さな子どもには、このような内面の部分までは理解できないかもしれません。「音のしかけが面白い」それがきっかけで、この絵本が好きになってもいいのです。それからこおろぎぼうやの気持ちがだんだんとわかってくるはずですから。