一読して、イチョウの実の子供たちと、イチョウの木のお母さんの、様々な思いが胸にあふれるようでした。
新しい旅立ちへの不安と希望、喜びと悲しみ、優しさとせつなさ・・・
こんな思いを抱きながら、賢治はイチョウの木を見上げていたのでしょうか。
千人の子供たちは、千通りの思いを抱いて、やがて旅立ちます。
まぶしい朝日を受けて、輝きながら一度に飛び出していく場面がとても印象的でした。
賢治の文章は本当に独特で、大好きです。
自然描写も透き通るほど美しい。
中でも、イチョウの葉をお母さんの黄金の髪の毛に見立てるなんて素敵です。
イチョウには雌雄があって、実を付けるのは雌の木だけ。だから「お母さん」なんですね。
そして、及川賢治さんの挿絵もとても可愛らしくていいなと思いました。
小さなまぁるい、黄色の頭をした沢山のかわいいイチョウの実たち。
夜のモノトーンの色彩の中で、イチョウの実と、光り輝く太陽の黄色が効果的に使われていて、とても素敵な絵本だと思いました。