森に囲まれていた町が、町が大きくなるにつれ、森は町の人々忘れられ、狭い土地に高い塀で囲まれ、子どもしか知らない場所になってしまいます。
私は20年前に住んでいた場所に、出かけたことがあります。小学校、中学校時代を過ごし、思い出をたくさん作った町です。
しかし、現実は残酷なものでした。田んぼはどこも宅地化され、私たちが遊んだ空地にも小さな家がびっしりと建っていました。
「ちょっとこいちょっとこい」とコジュケイが鳴き、カブトムシがいる秘密の木があり、野ウサギ棲んでいた山は、高架の道路で分断されていました。もう元には戻らないと思うと悲しくてたまりませんでした。
この絵本に出てくる工事をしようとした大人たちの心の中にも、森で遊んだときの楽しかった記憶が残っていたのではないでしょうか。そして改めて森の大切さを考えたに違いありません。
これをきっかけに、この町の森は、子どもはもちろん、大人にとっても大切なものとして、増えていくのでしょう。