大学3年のゼミで宮沢賢治をやりました。その時に私が発表したのがこの作品でした。
評論なども数多く読んだのですが、今は全部忘れてしまいました。でも、冬のお話だったこと、きつねが出てくる、宮沢賢治にしてはわかりやすい童話だったことを記憶していました。
息子が長いお話にも慣れてきたし、絵が息子の好きないもとようこ、冬のお話ということもあって、図書館で借りてきました。
雪の野原で四郎とかん子の兄妹は、きつねの紺三郎に出会います。きつねは人間をだますことから警戒する二人。紺三郎はきつねは決してだまさないことを力説し、幻灯会に誘います。
四郎とかん子、紺三郎が雪の野原で「しみ雪しんこ、かた雪かんこ」「キック、キック、トントン」と一緒に踊る姿がとても楽しげです。何度も出てくるこのフレーズを「キック、キック、トントン」と私の読む声に合わせて息子も声に出していました。
きつねは人をだますという偏見、きつねという姿にしていますが、差別や偏見なくしたいというメッセージをわかりやすく子どもに伝えているお話のようにもとれます。
「雪がすっかりこおって大理石よりもかたくなり、空も冷たいなめらかな青い石の板でできているらしいのです」という冒頭は、雪国で育った作者ならでは、他にも情景の描写は美しいものが多くあります。その美しい世界をいもとようこは、暖かく優しく描いています。
紺三郎の少しすました口調がおもしろいです。でも、人間と仲良くなりたいという気持ちはひしひしと伝わってきます。
最近、たかどのほうこの「ともださにナリマ小」というきつねと人間の小学校の交流の話を読みましたが、ひょっとしたらこのお話に影響を受けているのかもしれないと思いました。
「雪わたり」は、他にもいろいろな絵本があるようですが、子ども時代に一度は触れてほしいお話だと思います。いもとようこの絵本で、こうしてまた子どもと一緒に読むことができて幸せです。