九州の山奥に杉を育てて生活している村の話です。
独特のしきたりと木登り競争。
風土色で固められているので、受け止めるには高学年向けかもしれません。
木登り競争に勝つことで、すぎのほつみの権利を得る男たち。
勝者のとったすぎのほはいい木が育つといわれ、男たちは競争に勝つための鍛錬を重ねます。
いったん勝者になると、すぎのほの買い手も集まり、収穫が間に合わないと隣村からすぎのほを買い付けてそれを売るという者も現れる。
勝者は一躍裕福になるのだが、そのために男たちは鍛えることを忘れたり、怠惰な暮らしで次の年に勝者になることがない。
その中で、早くに父と死別して、貧乏な家に育った太郎が、競争に勝ち、奢ることなく誠実に生きていくさまが描かれます。
そして、太郎はむささび星の伝説として語り継がれることになる。
杉の木の、木から木へとむささびのように飛ぶ技は、想像すると恐怖心しか生まれないのですが、男の美学として描かれているのでしょうか。
想像できない話ですが、そのような風土が昔にはあったのです。
玄人受けするような絵本だと思います。